日時 : 2024年7月21日(日)13:30~15:00
場所 : 薩摩川内市清色地区コミュニティセンター
参加人数:23名 |
第一工科大学(鹿児島県霧島市)から4名の先生と6名の学生さんに薩摩川内市入来町までおいで頂き、下記の通り首題の講演会を開催して頂きました。まず西嶋啓一郎先生(第一工科大学教授)にご挨拶と講演会の概要説明をして頂き、下記の通り、まず入来麓城山からのドローンの空撮映像の上映をして頂きました。そのあと、学生さんより入来麓伝統的建造物群保存地区を対象とした景観まちづくりに関する2つの研究発表をして頂きました。
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1.入来麓城山からのドローン空撮映像の上映 |
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森 元一(第一工科大学建築デザイン学科准教授) |
山本順二(第一工科大学航空学部教授) |
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2024年2月20日(火)と7月21日(日)に入来麓上空からドローンによって撮影された動画が上映された。国が定める伝統的建造物保存地区でのドローン飛行は原則禁止されており、撮影に当たっては、薩摩川内市の文化政策担当部局と地域住民の許可が必要であるため、事前に飛行許可を申請し、国家資格を持った学生および教員によって撮影された空撮映像である。
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2.歴史的まちなみにおける景観の評価手法についての一考察
~薩摩川内市入来麓重要伝統的建造物群保存地区を事例に~ |
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辻 潔 (第一工科大学建築デザイン学科教授) |
津田優之介(第一工科大学建築デザイン学科3年生) |
田中 希 (第一工科大学建築デザイン学科3年生) |
新堀 心瑚(第一工科大学建築デザイン学科2年生)※発表者 |
研究目的 |
入来麓伝統的建造物群保存地区を対象とした景観まちづくりにおけるデザインコードの有用性を提示すること。空き家などにより修景が必要になった場合のデザインコード活用の可能性について検証を行うこと。
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方法 |
対象地区を構成する「馬場」の景観(街路の幅、両側の石垣や生垣)を実測調査して、現場写真と簡単な実測図を作成する。それを活用して、そこで暮す地域住民と地域外の若者を被験者に、現段階の景観をどのように感じて評価しているかのアンケート調査を行い、計量心理学手法であるSD法を用いて因子分析を行う。
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結果 |
住民は、中ノ馬場、尾迫馬場を親しみやすいと考えているとみられる。中ノ馬場には茅葺屋根があり、尾迫馬場の先には城山があり、路の傍らには武家町を象徴するデザインの入来小学校があるためである。したがって、住民には馬場の空間イメージが行いやすく、伝統意識があるため、馬場は空間認識の重要な役割を果たしていると考えることができる。これに対して地域の部外者である学生は、地域の意味論的空間認識を持っていないので、住民と同じような親しみやすさや伝統的意識を感じていないと考えられる。お仮屋馬場については、学生は親しみやすさを感じているが、住民はそうではない。
住民にとっては、景観要素における「城山」が重要性を持ち、城山へのアクティビティ(活動)に伝統的な意識や親しみやすさを印象付ける結果になっている。学生にとっては、空間の物語性の認識がないため、提示された情報だけで、①道幅が4m未満で両側に家が建ち、石垣や生垣がバースベクティブ(遠近法)に見えることが出来る空間、②茅葺門などのシンボル的な景観要素がある空間、という印象評価になっている。
これらの結果から、景観まちづくりにおけるデザインコードの活用は、ただ単に見た目だけの印象だけでなく、空間的な配置や、その部位が表す意味論的要素が重要であることがわかった。
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〔用語〕デザインコード=デザインコードとは、地域の景観を構成する要素の「配置」、「色」、「形」、「素材」、「生物種」における空間の秩序を形成する「視覚的な約束事」のことであり、景観づくりにおいて、周辺景観との調和を図る重要な手掛かりとなるものである。(※農林水産省「デザインコード活用手法」より引用) |
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